実際にエンバーミングを利用した遺族は、どのような感情を抱いたのでしょうか。大手葬儀社のアンケート調査やSNS、実務現場でのヒアリングから見えてくるのは、圧倒的な「対面の安心感」と、事前の想像を覆す体験です。
都内在住の50代女性の手記には、次のような切実な告白が記されています。「末期がんで壮絶な闘病の末に亡くなった母は、最期は体重が30キロ台まで落ち、頬がこけて痛々しい表情でした。しかし、エンバーミングを終えて戻ってきた母の顔を見た瞬間、涙が止まりませんでした。ふっくらとした生前の血色が戻り、まるで気持ちよく眠っているようでした。孫たちも怖がることなく『おばあちゃん、ありがとう』と手を握り続けることができ、心の底から救われました」
また、感染症で亡くなった家族を見送った遺族からは、「病院では厳重に隔離され、ビニール越しでしか対面できなかったが、エンバーミングを経たことで自宅へ連れて帰り、素手で触れて頬を寄せることができた。あの温もりを感じられなかったら、一生後悔が残っていた」という声が寄せられています。
一方で、手放しの賛辞ばかりではありません。コミュニティの相談掲示板などでは、現場の生々しい葛藤も散見されます。
「葬儀社の見積もりを見たら、基本プランに加えてエンバーミング費用として22万円が計上されており、動揺した」「遠方の親戚に『体に傷をつけて薬品を入れるなんて成仏できないのではないか』と苦言を呈され、親族間で気まずい思いをした」といったトラブルも報告されています。高額なオプション費用に対する納得感や、家族・親族間での価値観の共有が欠かせないことを示しています。