パスを出した瞬間に体育館中に響く「バチン!」という音。指導者から「音がうるさい!もっと柔らかく触れ!」と怒鳴られた経験を持つプレーヤーも多いはずです。オーバーハンドパスで音が鳴る原因と改善を科学的に紐解くと、ボールに対して手が「迎えに行きすぎている(逆衝突している)」ことが判明します。
時速数十キロで落ちてくるボールに対して、静止した手や前進する手をぶつければ、当然ながら強い衝突音が発生し、ボールのコントロールは乱れます。音が鳴らない選手は、ボールが手に触れるわずか数ミリ秒の間に、指先と手首、肘をわずかに引き込むような柔らかな「タメ」を作り、ボールの落下エネルギーを殺さずに次の進行方向へと変換しています。
そして、この繊細なハンドリングを支え、バレーボールのトスを安定させるコツの根幹となるのが、オーバーハンドパスの膝と全身の連動です。人間の身体は、床を蹴る力(床反力)が足首、膝、股関節、体幹、肩、肘、そして指先へと順番に伝わる「キネティックチェーン(運動連鎖)」によって最も効率的な力を発揮します。ボールが手元に収まる直前に軽く膝を緩め、インパクトの瞬間に合わせて膝と足首をスッと伸ばす。この下半身の伸び上がりと手のリリースが完全にシンクロしたとき、腕に一切の力みを感じることなく、ボールは狙ったピンポイントへと美しく吸い込まれていきます。