現代のバイク整備は、コンピュータによる故障診断が主流となりつつある。だが、数十年前のエンジンが発する微細なノイズや、シリンダー内部の僅かな摩耗を感知するには、やはり長年の経験に裏打ちされた人間の五感が不可欠だ。
工具を握る手の感触、爆発音の微妙なズレ、オイルの匂い。機械の数値を過信せず、金属の「声」に耳を澄ませる職人技。パーツを単に新品へ交換するのではなく、状態を見極めて削り、調整し、最適な状態へと組み上げ直す。そのクラフトマンシップに触れたとき、ライダーは自分の愛車が単なる移動手段ではなく、命を吹き込まれた生命体であると再認識するのだ。