桃喰綺羅莉という怪物を語る上で避けて通れないのが、百花王学園の生態系を根底から作り変えた家畜制度(ポチ・ミケ制度)の存在です。前生徒会長をギャンブルで退け、第105代生徒会長に就任した彼女は、多額の上納金を納められない生徒に首札を下げさせ、人間としての尊厳を奪う過酷な身分ピラミッドを構築しました。
一見すると単なるサディスティックな独裁体制に映りますが、彼女の真意はより底知れない狂気に根ざしています。学園を自らの私的な「箱庭(水槽)」と呼び、生徒たちが極限のギャンブルで剥き出しにする本能や絶望、そして奇跡的な逆転を誰よりも楽しむ観察者としてのスタンスを崩しません。「生かすも殺すも私の自由」と言わんばかりの態度でありながら、システム自体は極めて公平に機能させており、勝者には等しく権力を与え、敗者には容赦ない転落を課します。
ここに主人公・蛇喰夢子との決定的な類似性と対立軸が生まれます。夢子がギャンブルそのものがもたらす「リスクの快感と破滅の恐怖」に身を投じる狂乱のギャンブラーであるのに対し、綺羅莉は「混沌を統べるゲームマスターでありながら、自らも盤上に飛び込んで命をチップにする」冷徹な神の視点を持っています。この二人が視線を交錯させる瞬間の緊張感こそが、本作の推進力となっているのです。