同棲を始めた会社員が最も神経を尖らせるのが、「会社に同棲がバレるのか」「住宅手当が打ち切られないか」という実利的な問題です。人事労務の現場を検証すると、会社側に同棲の事実が把握される経路はほぼパターン化されています。
企業の多くは、住宅手当の支給要件として「自ら賃貸借契約の名義人であること」に加えて「住民票上の世帯主であること」を就業規則に明記しています。もし2人で1つの世帯を作り、契約者ではない側が世帯主になってしまうと、契約者側の手当受給資格は即座に消失します。さらに、手当申請時に会社から「世帯全員が記載された住民票(謄本)」の提出を義務付けられている場合、相方が世帯主で自分が「同居人」と記載されていれば、同棲の事実が完全に可視化されます。
一方で世帯分離を選択していれば、自分が世帯主である単独の住民票(抄本ではなく自身が世帯主の謄本)が発行されます。そこには同居しているパートナーの氏名や情報は一切記載されず、会社側からは完全に「一人暮らしの世帯主」として処理されるため、手当の要件を完璧に満たしつつ余計な詮索を避けることが可能です。
また、毎年秋に行われる年末調整の書類(給与所得者の扶養控除等申告書)における「世帯主の氏名」および「続柄」欄の書き方にも注意を払わなければなりません。世帯分離をしている場合は、世帯主の氏名欄に「自分の名前」、続柄欄に「本人」と記入するのが正解です。ここを誤ってパートナーの名前にしてしまうと、社内記録の整合性が崩れて総務部から確認が入る原因になります。
税法上の扶養控除についても誤解が蔓延しています。「同棲相手を自分の税法上の扶養に入れて節税したい」と考える人がいますが、所得税法における控除対象配偶者や扶養親族は、民法上の婚姻届を提出した配偶者または6親等内の血族・3親等内の姻族に限定されています。どれほど生計を一体化させていようと、法的な婚姻届を出していない同棲相手を所得税の扶養に入れることは法律上不可能です。税務署の監査が入れば追徴課税と過少申告加算税を課される重大な違反となるため、甘い言説に惑わされてはなりません。