教育テレビの枠組みを根底から揺さぶった「えいごふだ さなえちゃん 正体」を語る上で欠かせないのが、番組『えいごであそぼ』内での位置付けです。「えいごふだ」は、日常で使える短い英語表現を1回あたり約1分で直感的に刷り込むショートアニメーションコーナーとして放送されていました。
その中に突如として現れたのが、赤い服におかっぱ頭、そして一切の感情を排したような瞳を持つ少女「さなえちゃん」でした。ほのぼのとした動物キャラクターやポップな着ぐるみが主役を務める『えいごであそぼ』のスタジオパートから一転、インターバルで流れる彼女の登場シーンは、画面の空気を一瞬で凍りつかせるほどの異様な緊張感を放っていました。
制作に携わっていたのは、慶應義塾大学の佐藤雅彦研究室から生まれたクリエイティブグループ「ユーフラテス(EUPHRATES)」です。『ピタゴラスイッチ』の「ピタゴラ装置」などで知られる彼らは、無駄な装飾を極限まで削ぎ落とし、視聴者の知的好奇心と無意識の視覚認識を刺激する映像ロジックを得意としています。さなえちゃんの異質なビジュアルは、単なる悪ふざけではなく、徹底した計算のもとに設計された視覚的フックでした。