郷さんの父親である原武次雄さんは、かつての日本国有鉄道(国鉄)に勤務する堅実な鉄道マンでした。曲がったことを嫌い、礼儀作法や時間を重んじる典型的な昭和の頑固親父タイプで、家庭内でも非常に厳格な教育方針を貫いていたといいます。
1970年代初頭、銀座で映画のオーディションを受けたことをきっかけに芸能界へスカウトされた郷さんですが、次雄さんは「水商売のような不安定な世界に息子をやるわけにはいかない」と芸能界入りに猛反対しました。真面目な公務員気質だった父にとって、華やかすぎる世界は危険に満ちているように映ったのです。
しかし、息子の並々ならぬ熱意と誠意に押され、最後には「やるからには中途半端な真似はするな。日本一になれ」と背中を押しました。デビュー後、次雄さんは表舞台に出ることは一切ありませんでしたが、テレビ出演のスケジュールを几帳面に手帳へ書き留め、誰よりも息子の活躍を誇らしく見守る無口で愛情深い父親でした。