大和の風土が育んだ奈良の料理は、日常のなかでじわじわと身体に染み渡るような深い味わいに満ちています。編集部が現地調査と利用者の満足度調査から割り出した、絶対に外せない名物の系譜を紐解きます。
筆頭に挙がるのが奈良名物柿の葉寿司です。海の無い大和の地に、熊野灘や紀州の浜から塩漬けにして運ばれた鯖。これを薄く切り、米飯の上に載せて柿の葉で包み、重石をかけて数日間発酵させたのが始まりとされています。柿の葉に含まれるタンニンによる高い防腐効果と清々しい芳香が、魚の生臭さを抑え、酢飯の酸味をまろやかに包み込みます。近年では鯖だけでなく鮭や小鯛、穴子などを美しく詰め合わせた折箱が定番化していますが、製造から半日〜1日経過して飯と魚の脂が馴染んだ瞬間こそが本来の食べ頃です。
続いて欠かせないのが、桜井市三輪の地で1200年以上の歴史を刻む三輪そうめん本場の味です。日本における麺類の祖先とも称される三輪そうめんは、極寒期に小麦粉と塩水を練り上げ、綿実油を塗りながら手作業で極細に引き延ばしていく伝統製法が守られています。特筆すべきは、製造後に専用の蔵で梅雨を越させて熟成させた「ひね(古物)」と呼ばれる麺のコシの強さです。茹で上がりの麺線は白く透き通り、強靭な弾力と喉越しの良さは一般的な素麺の概念を覆します。冷やしそうめんはもちろん、冬場に温かい出汁を張った「にゅうめん」として食す文化も、奈良ならではの心温まる食体験です。
さらに甘味の頂点に君臨するのが吉野葛スイーツ評判と名店の存在です。マメ科の植物・葛の根から極寒の地下水のみを用いて精製される「吉野本葛」は、国内流通量のわずか数パーセントに過ぎない希少品です。注文を受けてから本葛粉と水、砂糖のみを火にかけて手早く練り上げる葛きりは、出来立てのわずか10分間しか真の透明度と弾力を保てません。黒蜜にくぐらせて口に運んだ瞬間の、雪解け水のような清涼感と滑らかな喉越しは、現地に足を運んだ者だけが享受できる至高の贅沢です。
近年の奈良町(ならまち)界隈では奈良食べ歩き人気スイーツの熱気も見逃せません。店頭での目にも留まらぬ高速餅つきで知られる老舗のつきたてよもぎ餅や、氷の神を祀る氷室神社のお膝元として百花繚乱の進化を遂げた「純氷かき氷」、香り高い大和茶をふんだんに練り込んだ濃密なジェラートなど、歴史情緒ある街並みを巡りながら味わえる手軽な甘味文化が活況を呈しています。