作品を追う読者が最も息を呑むのが、中盤から最終回へ向けて一気に加速する怒涛のサスペンス展開と、明かされる事件の全貌です。ここからは、核心に触れる重大なネタバレを含めながら、犯人の真相を論理的に考察します。
和宏が実家の捜索を進める中で浮上した最大の謎――「祖父母の失踪」の真相は、想像を絶する凄惨なものでした。居座り男によって精神的・経済的に追い詰められていた一家において、男の横暴に最後まで抵抗しようとした祖父は、口論の末に殺害され、祖母もまた男の支配を維持するための犠牲となって地下や敷地内に遺棄されていたという戦慄の真実が判明します。
さらに読者に強いショックを与えたのが、「なぜ両親は警察に通報せず、男を家に招き入れ続けていたのか」という共犯関係の構図です。物語を紐解くと、居座り男は最初から暴力で押し入ったわけではありませんでした。最初は父や母の小さな弱み、家庭内の秘密、あるいは金銭的困窮といった「家庭のほころび」に親身な相談相手として取り入り、巧みに貸しを作りながら少しずつ侵食していったのです。
気がついたときには、両親自らが男の言いなりにならざるを得ない「後ろ暗い共犯の檻」に囚われていました。男に危害を加えられる恐怖だけでなく、「男を告発すれば自分たちの不正や罪も暴かれる」という心理的トラップに嵌められていたのです。最終回において、和宏は自らの命を賭してこの男と対峙し、警察の介入と物理的衝突によって凄惨な結末を迎えますが、生き残った家族の心には決して消えない決定的な亀裂が刻まれることになります。
単なるオカルト現象ではなく、「洗脳と搾取による実家乗っ取り」という現実の凶悪事件(北九州監禁殺人事件や尼崎連続変死事件など)を彷彿とさせる構造が、本作の結末を単なるフィクションにとどまらない圧倒的なリアリズムへと昇華させています。