ORANGE RANGEの歴史を語る上で避けて通れないのが、デビュー初期を支えたオリジナルドラマー・KATCHAN(かっちゃん/本名:北尾一人)の存在です。絶頂期にあった2005年7月31日に突如発表された脱退は、当時のファンコミュニティに激震を走らせました。
脱退の直接の契機となったのは、同年6月に公表された「左手小指の腱鞘炎(けんしょうえん)」でした。当時バンドはタイアップ曲の制作と過密なツアースケジュールに追われており、ドラマーとしての肉体的負荷は限界に達していました。しかし、その根底にあったのは「音楽的な方向性の乖離」と「急速なメガヒットに伴う精神的重圧」でした。
関係者の証言や当時の音楽誌インタビューを統合すると、ヒップホップや打ち込みサウンドを取り入れたポップミクスチャーへと進化させたい制作陣と、純粋な生ドラムを主体としたハードロックやパンクを志向していたKATCHANとの間で、徐々に表現への温度差が生じていました。「幼馴染の仲間で作ったバンド」が巨大ビジネスへと変貌していく速度に、KATCHAN自身が違和感を抱いたことも脱退の大きな要因です。
一方、ネット上で一部囁かれた「KATCHAN死亡説」は、完全な事実無根の悪質なデマです。脱退直後に表舞台から姿を消したことや、別の著名ミュージシャンの訃報、あるいは匿名掲示板での無責任な書き込みが尾ひれをつけて拡散されたものと断定できます。
実際のKATCHANはバンド脱退後も音楽への情熱を捨てず、新バンド「KCB(KICK CHOP BUSTERS)」を結成してメジャー再デビューを果たしました。その後はドラム講師を務めたり、地元や関西で飲食店を手掛けたりするなど、一人の表現者・実業家として地に足をつけた人生を歩んでいます。メンバーとの間に決定的な遺恨はなく、大人になった現在では互いの道をリスペクトし合う関係へと軟着陸しています。