坂井泉水さんの作詞における真骨頂は、具体的でありながら聴き手ごとに異なる情景を喚起させる「余白の美学」にあります。『マイフレンド』の歌詞中にある「あなたを想うだけで 心は強くなれる」というフレーズは、恋愛感情とも友情とも解釈できる絶妙な距離感で紡がれています。
後年の回顧録や関係者の手記によれば、坂井さんはレコーディング直前までノートに何度も言葉を書き直し、母音の響きや言葉の乗せ方に徹底的にこだわっていました。孤独なスタジオ作業のなかで、遠く離れた友人や応援してくれるファンを意識して綴られた言葉だからこそ、リスナーは「自分のための歌だ」と感じることができます。心理学的に見ても、無条件の承認と心理的安全性を与える歌詞構造が、時代を超えて聴く人の自己肯定感を支える要因となっています。