重大な不祥事のニュースを聞くと、巨額の粉飾決済や組織的な製品データ改ざんといった非日常的な事件を思い浮かべがちです。しかし、企業の息の根を止める導火線となるのは、オフィスや日常業務の延長線上にある身近なコンプライアンス違反です。
1. 「指導」という免罪符が通用しないパワハラとコンプライアンス違反
厚生労働省が定めるハラスメント防止関連法規の厳格化に伴い、業務上の指導とパワーハラスメント(パワハラ)の境界線は劇的に変化しています。かつては「熱血指導」で片付けられていた言動が、明確な不法行為として断罪されるケースが相次いでいます。
「この程度のノルマも達成できないなら辞めろ」「給料泥棒」といった暴言はもちろんのこと、業務と無関係な私的雑用を強要する、あるいは逆に意図的に業務から外して孤立させるといった行為も、管理職としての権限を逸脱した違反行為とみなされます。被害者がメンタルヘルス不調に陥った場合、企業側は安全配慮義務違反に問われ、数千万円規模の損害賠償責任を負うリスクに直面します。
2. 利便性の追求が引き金となる情報漏洩とコンプライアンス違反
テレワークやクラウドサービスの普及によって劇的に増加したのが、従業員の過失や独断による情報漏洩です。特に警戒すべきは、会社が許可していない個人所有のPCやスマートフォン、個人向け無料チャットツールを業務に利用する「シャドーIT」の横行です。
「客先ですぐにファイルを確認したかったから、私用のアドレスに社外秘の顧客リストを転送した」「業務を効率化するために、機密データを許可なく生成AIサービスに入力した」といった行為は、悪意がなかったとしても重大なセキュリティ規程違反にあたります。一度外部に流出した個人情報や取引先の機密データは回収が不可能であり、損害賠償請求だけでなく、取引停止や事業免許の取消といった破滅的な事態を招きます。