本作が誕生した背景には、日本の広告史と音楽史が完璧にシンクロした歴史的な発売日・1983年4月1日のドラマが存在します。当時、「シャネルズ」としてデビューしミリオンヒットを連発していたグループは、ドゥーワップを基盤としながらも新たなアイデンティティを確立すべく、「ラッツ&スター」へと改名。そのリスタートを飾る運命的な第1弾シングルが本作でした。
タイアップ先となったのは、当時コスメ業界で季節ごとのメイクトレンドを牽引していた資生堂の1983年・夏キャンペーンです。アイシャドウを中心としたアイメイク商品をプロモーションするにあたり、キャンペーンコピーとして打ち出されたキーワードこそが「め組のひと」でした。クライアントからの「目元を際立たせる楽曲」という厳格なオーダーに対し、作曲を手掛けた稀代のヒットメーカー井上大輔(元ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)は、ファンクやディスコ、ブラックコンテンポラリーの潮流を巧みに吸収したグルーヴィーなメロディラインを構築します。
さらに、サビのクライマックスで放たれる「いなせだね」「めッ!」というキメフレーズは、歌謡ポップスにおいて前例のないインパクトをもたらしました。視覚的な化粧品CMと、聴覚を刺激するソウルフルなアンサンブルが共鳴し合い、シングル売上は約60万枚を記録。ラッツ&スターは改名直後のプレッシャーを跳ね除け、グループの黄金期を決定づけることとなったのです。