タイピングの速度を測る国際基準として用いられるのが「WPM(Words Per Minute:1分間あたりの英単語入力数)」です。半角5キーストロークを1単語として換算するのが公式な測定法ですが、ギネス世界記録の打鍵速度史において伝説として語り継がれるのが、1946年にステラ・パユナス(Stella Pajunas)氏がIBM製電動タイプライターで樹立した1分間に216ワード(1,080打鍵/分)という大記録です。
この記録を秒速に換算すると、実に毎秒18文字(打鍵)を規則正しく刻み続けた計算になります。人間の瞬きの速度がおよそ0.1秒〜0.15秒であることを踏まえると、瞬きを2回する間に3〜4文字が叩き込まれている計算です。機械式・初期電動式の重いキータッチを要した時代に叩き出されたこの数値は、半世紀以上が経過した現在も公式記録の金字塔として君臨しています。
一方、近年のデジタルPC環境における「タイピング最速 歴代記録」において、インターネット競技シーンの生ける伝説として知られるのがショーン・ローナ(Sean Wrona)氏です。同氏は競技タイピングサイト「TypeRacer」や全米タイピング選手権(Ultimate Typing Championship)の初代王者として名を馳せ、短時間の瞬間最高速度では256WPM(秒速換算で約21.3打鍵)、非公式のショートスパート測定では300WPM(秒速25打鍵)に肉薄するログを残しています。報道各社の取材に対し、関係者は「キーを目で追う時間はゼロであり、視覚刺激が網膜に映った瞬間に指先へ運動指令が直結している」と証言しており、まさに神経伝達速度の限界に挑むアスリートの世界がそこにあります。