白鸚の役者人生を語る上で絶対に外せないのが、ミュージカルの金字塔『ラ・マンチャの男』と、歌舞伎の代名詞演目『勧進帳』における武蔵坊弁慶役だ。前者は半世紀以上にわたり主役のドン・キホーテを演じ切り、前人未到の通算上演回数を樹立。満身創痍で臨んだラストステージで見せた魂の熱唱と圧倒的な気迫は、観客の心に永遠の記憶として刻まれている。
一方、歌舞伎における弁慶もまた、彼の生き様そのものを映し出す鏡であった。重厚な衣装を背負い、力強く飛び六方で花道を引っ込む姿。傘寿を越えてもなお自らに一切の妥協を許さなかったストイックな姿勢こそ、彼が偉大な表現者たる所以だ。病気療養という試練に対峙する今も、その根底にある不屈の精神は決して揺らいでいない。