テロ直後の混沌とした情勢下において、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は「国家の傷を癒やし、尊厳を取り戻す」と宣誓し、犠牲者と遺族に対する全面的な支援を約束した。その足元で、ルディ・ジュリアーニ元市長をはじめとする自治体トップは、現場の捜索活動と特定作業に一切の妥協を許さない方針を打ち出した。
政治的・社会的状況が時代とともに激変するなかでも、遺体特定という国家的な責務は行政の垣根を越えて継承されてきた。巨額の予算と人員が投じられ続けた背景には、遺族に対する悲願の成就だけでなく、民主主義国家としての道義的義務という強い信念が存在する。
四半世紀の歩みは、悲劇に対する国家と市民社会の誠実さを測る尺度でもある。権力の変遷にかかわらず継続されてきたこのプロジェクトは、アメリカという国家が個人の尊厳をいかに重んじているかを体現する象徴的な証左といえる。