「新鮮なもつを買ってきたから、そのまま鍋に入れても大丈夫だろう」と下処理を省いてしまうと、仕上がりの味を大きく損なうことになります。もつ鍋の下処理をしないとどうなるのか、その決定的な理由は内臓肉の組織構造と脂質の性質にあります。
生もつの表面には、流通段階で分泌された粘液(ムチン質)や微細な血液成分、酸化した脂質が付着しています。これらを洗い流さずに加熱すると、脂質が煮汁全体に過剰に溶け出し、スープ表面に数センチもの油膜を形成してしまいます。その結果、具材全体が油っぽくなり、強い胃もたれの原因となります。
さらに深刻なのが「揮発性アミン類」をはじめとする臭気成分です。下茹でを経ずに直接スープで煮込むと、雑味が煮汁に閉じ込められ、キャベツやニラといった野菜本来の甘味まで完全にマスキングされてしまいます。下処理は単なる脂落としではなく、雑味を隔離して良質な旨味だけを抽出するための必須工程なのです。