米津玄師のディスコグラフィにおいて、国民的アンセムとしての地位を決定づけたのが2018年発表の『Lemon』(TBS系ドラマ『アンナチュラル』主題歌)です。Billboard JAPAN Hot 100において日米初となる2年連続年間1位を獲得し、MV再生数は8億回を突破する歴史的記録を打ち立てました。
この楽曲の制作過程には、極めてパーソナルで過酷なドラマが存在していました。全国ツアーの最中、制作の大詰めを迎えていた時期に最愛の祖父が他界。死の悲しみと直面するなかで歌詞の全面的な書き直しを余儀なくされ、締め切り直前までスタジオに籠もり続けたと回顧されています。当初想定していた「ドラマの登場人物への鎮魂歌」は、自身が直面した「個人的な喪失への祈り」へと昇華され、結果として何億人ものリスナーの痛みに深く寄り添う普遍的な名曲が結実しました。
その後もタイアップ楽曲において驚異的な精度と作家性を両立させ続けています。TVアニメ『チェンソーマン』OPテーマ『KICK BACK』では、モーニング娘。の楽曲を大胆にサンプリングし、米国レコード協会(RIAA)から日本語楽曲として史上初のゴールド認定を授与される快挙を達成。さらにスタジオジブリ映画『君たちはどう生きるか』の主題歌『地球儀』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』の主題歌『さよーならまたいつか!』など、映像作品の世界観を緻密に咀嚼しながら、自らの作家性を一切妥協しないスタイルを貫いています。