「日本に一番近い国」というテーマをめぐっては、インターネット上の掲示板やSNS、知恵袋などで数多くの誤解や不正確な言説が散見されます。代表的な3つの盲点について、地政学的および歴史的な事実から検証します。
第1の誤解は、「日本の最北端である稚内から樺太(サハリン)が最も近い」という思い込みです。多くの旅行ブログ等で宗谷岬とサハリンの約43kmが引き合いに出されますが、前述の通り根室市・納沙布岬沖の貝殻島(約3.7km)や水晶島(約7km)のほうが桁違いに近接しています。北方領土が法的な係争地域であることから測量データから除外されてしまうケースが多いため、このような情報の抜け落ちが発生します。
第2の誤解は、「小笠原諸島や南鳥島からアメリカ領(グアム・サイパン)がすぐ隣にある」という言説です。確かに南鳥島は日本の最東端であり太平洋のただ中に位置しますが、南鳥島から北マリアナ諸島やグアムまでは約1,200km〜1,400km以上離れています。本州と沖縄本島ほどの距離が隔たっており、「一番近い国」の議論における候補には到底なり得ません。
第3の盲点は、「対馬全域から釜山が見える」という誤認です。対馬は南北約82kmに及ぶ細長い島であり、南部の厳原港周辺からは韓国の陸地を見ることはできません。釜山の夜景や山影を捉えることができるのは、島の最北部に位置する上対馬町の限られた展望スポットや高台に限られます。天候や大気中のPM2.5、黄砂の飛散状況にも大きく左右されるため、訪れれば必ず見えるわけではないという現実があります。