欧米では花束やメッセージカードを添えて互いに愛を伝える日として定着したバレンタインが、なぜ日本では「チョコレートを贈るイベント」へと変貌を遂げたのか。その背後には、戦後の高度経済成長期における巧みなビジネス戦略と社会情勢の交錯があった。
昭和30年代、製菓・スイーツ業界の各社は新たな需要を喚起しようと躍起になっていた。デパートでのフェアや新聞広告を通じて「バレンタインにはチョコレートを」というキャンペーンが次々と打ち出される。日本チョコレート・ココア協会などの業界団体の広報活動も後押しし、1970年代に入ると「女性から好きな男性へ告白する日」という日本特有のストーリーが空前のブームを巻き起こした。控えめな女性が自らの想いを伝える絶好の口実として、甘いチョコレートが見事にハマったのだ。