藤岡弘の名を伝説たらしめているのは、容姿の美しさだけではない。黎明期の特撮現場において、彼は変身前の本郷猛だけでなく、スーツを着た仮面ライダーのアクションやバイクスタントの大部分を自らこなしていた。
だが、その命知らずの情熱は過酷な悲劇を招く。番組開始直前のロケ中、バイクで障害物を飛び越えるスタントで転倒。左大腿骨を粉砕骨折し、骨が肉を突き破る重傷を負った。医師からは「二度と歩くことはできない、下手をすれば切断」とまで宣告されたという。作品の立ち上げという重圧、突如突きつけられた絶望。並の人間であれば心が折れてもおかしくない極限状態だった。
しかし、彼は諦めなかった。武道で培った不屈の精神力で壮絶なリハビリに耐え抜き、奇跡的な回復を遂げて再び現場へと帰還する。死線を越えた男の瞳には、以前にも増して凄まじい覚悟と深みが宿っていた。この生還劇こそが、本郷猛というキャラクターに唯一無二の説得力を与えたのである。