この地を語る上で外せないのが、和歌山県紀の川市が世界に誇るブランド果実の圧倒的な品質である。初夏から夏にかけて売り場をピンク色に染め上げる「荒川の桃」は、口に含んだ瞬間に繊維がほどけ、濃厚な果汁が溢れ出す。一般のスーパーに並ぶ早摘みの桃とは異なり、樹上で極限まで糖度を蓄えた完熟品が手に入るのは、産地直結のここならではの特権だ。
一方、冬から春の主役を張るのが、和歌山オリジナル品種のまりひめ(いちご)だ。大粒で艶やかな深紅の果皮を割り進むと、強い甘みと穏やかな酸味が絶妙なバランスで広がる。傷みやすい完熟まりひめは長距離輸送に弱いため、都市部ではなかなかお目にかかれない逸品。午前中の早い段階で完売札がつく光景は、今や風物詩となっている。
生産者の名前が記されたラベルを見比べ、自分だけのお気に入り農家を見つけ出すのも常連たちの密かな楽しみだ。同じ品種であっても、畑の標高や土壌の配合、肥料の選定によって味わいのグラデーションは驚くほど異なる。