今や日本のテレビドラマにおいて欠かすことのできない顔となったのが江口のりこだ。彼女の最大の魅力は、過剰な感情表現を排した「徹底的なリアリズム」と、世間に一切媚びない独特の佇まいにある。
かつて日本のドラマ界で重宝された「ステレオタイプなおばさん像」を、江口は軽やかに解体してみせた。淡々とした口調の奥に潜む感情の揺らぎや、社会で生きる市井の人々が抱えるリアルな疲労感、諦念、そして微かなユーモア。彼女が演じるキャラクターには、観る者が思わず「自分の隣にもこういう人がいる」と錯覚してしまう生々しさがある。
主役を演じても脇を固めてもブレないそのスタンスは、劇的な展開に頼りがちだった日本のドラマ制作に、大人の鑑賞に堪えうる深みと落ち着きをもたらしている。