「毎日300kcal相当の運動をしているのに体重が一向に減らない」という悩みは、フィットネス現場で頻繁に聞かれる声のひとつです。これには生体生理学および行動心理学に基づく構造的な理由が存在します。
第一の要因は、心理学で「ライセンシング効果(Moral Licensing)」と呼ばれる自己正当化バイアスです。「今日は激しい運動で300kcal消費した」という達成感が免罪符となり、「少し多めに食べても大丈夫」「間食のスイーツを1個追加しよう」と無意識のうちに400〜500kcalを摂取してしまう現象が多発します。運動による消費カロリーを、過剰摂取が軽々と上回ってしまう構図です。
第二の要因は、「NEAT(非運動性熱産生)」の低下です。激しい運動をした反動で、その後の日常生活における活動量(階段の使用、立位時間、歩行数)が激減し、ソファーで横になる時間が増えてしまうと、トータルの1日消費エネルギーは運動前と変わらない、あるいは下回る結果にすら陥ります。
さらに、成人における1日の総消費エネルギーの内訳は、基礎代謝が約60〜70%、活動代謝が約20〜30%、食事誘発性熱産生(DIT)が約10%で構成されています。運動量(活動代謝)を増やすことだけに執着するのではなく、筋肉量を落とさずに基礎代謝を維持し、日常のNEATを高水準にキープすることこそが、体脂肪減少を破綻させない本質です。