大正時代に北海道で起きた惨劇を描いた吉村昭の小説『熊嵐』は、人喰いヒグマの恐ろしさを今に伝える古典的名作だ。しかし、いま目の前で起きている事態は、もはや過去の歴史小説の出来事ではない。
NHKが放送したドキュメンタリー番組や、Netflixで世界配信され反響を呼んだ野生動物と人間社会の衝突を追ったドキュメンタリーシリーズでも指摘されている通り、気候変動によるどんぐりの不作と中山間地域の荒廃は、かつてない規模で野獣を人里へと押し出している。圧倒的な筋力と俊敏性を誇るヒグマやツキノワグマの脅威は、現代の都市部においても現実の恐怖として市民に襲いかかっている。