香水は生きており、時間とともに変貌する。揮発性の高いシトラスやハーブが立ち上がるトップノートは、わずか15分から30分で消え去る。続いて広がるフローラルやスパイシーなミドルノートが主役を演じるのは約2時間から3時間程度だ。
真の主役であるラストノート(ベースノート)は、吹きかけてから2時間ほど経過してようやく素顔を見せ、長ければ8時間から半日以上も肌にとどまる。サンダルウッド、シダーウッド、アンバー、ムスク、バニラといった分子量の重い成分がここで本領を発揮するのだ。朝つけた香りが夕暮れ時のオフィスでふとした瞬間に漂うとき、周囲が感知しているのはトップの爽やかさではなく、この深く濃密な残り香である。