車の電動化に伴い、暖房の常識は大きなパラダイムシフトを迎えている。電気自動車(EV)には巨大な熱源となるエンジンが存在しない。そのため、従来のように排熱を無償で利用することができず、電気を使って自ら熱を作り出す必要がある。
初期の電気ヒーターは駆動用バッテリーの電力を大量に消費し、冬場の航続距離を著しく縮める要因となっていた。しかし現在では、トヨタ自動車や本田技研工業をはじめとする主要メーカーが、大気中の熱を効率よく集めて暖房に利用する高度なヒートポンプシステムを導入している。外気温が氷点下でも効率的な熱交換を可能にする技術革新が進み、電費性能の低下は大幅に抑制されつつある。
EVを冬季に賢く運用するなら、走行前のプレ空調(普通充電中に車内を温めておく機能)と、シートヒーターやステアリングヒーターの併用が欠かせない。空間全体を温める前に身体を直接温めることで、ヒーターによる電力消費を抑え、航続距離のロスを最小限に食い止めることができる。