情報空間に溢れるシニア向けコンテンツの中には、実態を歪めた誤解や、商業主義に煽られた極端な言説が散見されます。最も注意すべきは、70代終活の準備と進め方における重大な盲点です。
ネット上の情報では「終活=エンディングノートを書き、身の回りのモノを断捨離すること」と矮小化されがちですが、実務の現場で発生するトラブルの多くは「生前対策の順序の間違い」から生じています。
現場で多発する代表的な落とし穴は以下の3点です。
- デジタル遺産の放置:スマートフォンのロック解除パスワード、ネット銀行、暗号資産、月額課金サブスクリプションのリストアップを怠り、認知機能低下後や死後に口座が凍結・放置され遺族が多大な損害を被る事態。
- 早すぎる生前贈与と税制改正の無理解:手元資金を過度に子どもへ贈与した結果、自身の有料老人ホーム入居費用が不足する本末転倒の事例。相続税・贈与税のルール変更(生前贈与加算期間の延長など)を把握せず、節税にならないケースも頻発。
- 実家の空き家化リスク:「親の死後に処分すればいい」と先送りした結果、境界未確定や名義変更の不備で売却できず、固定資産税や管理費だけが子ども世代に重くのしかかる負動産化問題。
家族社会学の観点からも、親子の関係性における「心理的バウンダリー(境界線)」の崩壊が問題視されています。子どもに迷惑をかけたくないあまり一切の相談を拒絶して孤立死のリスクを高める親がいる一方で、子どもの家庭に過干渉し老後資金の使途をめぐって骨肉の争いに発展するケースも少なくありません。終活の本質は「死の準備」ではなく、「残された時間を自立して生き抜くための権利関係と人間関係の棚卸し」であるという認識が不可欠です。