『薬屋のひとりごと』の最大のドラマ的推進力となっているのが、猫猫と壬氏(本名:華瑞月 / カズイゲツ)との恋の進展です。当初、絶世の美貌を武器に後宮の女性たちを手玉に取っていた壬氏に対し、猫猫は「虫を見るような視線」で塩対応を貫いていました。しかし、権力に媚びず自らの知識のみを頼りに事件を解決する猫猫の姿に、壬氏は身分や立場を超えて深く魅了されていきます。
物語の中盤以降、壬氏が宦官ではなく現皇帝の実弟(血筋上は実子である皇太弟)という国家最高峰の身分であることが露わになります。壬氏は皇位継承争いから自らを排除し、猫猫を娶るために自らの身体に焼き鏝を当てるなど、壮絶な覚悟を示して求婚を迫ります。これに対し、権力の渦に巻き込まれることを極度に恐れる猫猫は長らく逃避を続けていましたが、壬氏の孤独や背負う重圧の深さを知るにつれ、徐々にその頑なな心を変化させていきました。
原作小説の最新展開において、二人は単純な「身分差恋愛の成就」という枠組みを超え、国家の医学発展を担う女性医官と、それを支える皇族政治家という対等なパートナーシップを構築しつつあります。猫猫は壬氏のプロポーズを拒絶するのではなく、「医官としての自立」と「壬氏の伴侶としての責任」を両立させる現実的な妥協点を見出しつつあり、二人の関係は最終的な婚姻へ向けて着実に歩みを進めています。