「ミルクも飲んだ、オムツも濡れていない、室温も完璧。それなのに何をしても泣き止まない」という事態は、新生児期を迎えたほぼすべての家庭が直面する試練です。発達心理学や小児神経学の分野では、生後2〜3週目からピークを迎えるこの激しい啼泣を「PURPLE Crying(パープル・クライング)」と定義づけています。これは病気や親の接し方のミスではなく、赤ちゃんの脳神経が未発達な状態から外界の膨大な情報刺激を処理しきれずに起こる、いわば中枢神経のオーバーヒート現象です。
新生児の一日の総睡眠時間は、医学的な基準値として新生児睡眠時間目安である16時間〜18時間程度とされています。数字だけを見ると「ほぼ一日中寝ている」ように思われがちですが、実態は大きく異なります。新生児の睡眠はレム睡眠(浅い眠り)が全体の約50%を占め、体内時計(サーカディアンリズム)を司るメラトニンの分泌が軌道に乗っていないため、40〜50分程度の極めて短いサイクルで覚醒を繰り返します。大人であれば浅い眠りの合間に自然と再入眠できるところを、新生児は自力でリラックス状態へ移行するスキルを持ち合わせていません。
また、臨床現場で助産師が指摘する新生児が泣き止まない理由の代表例が、未熟な消化管に溜まる空気の圧迫感です。新生児の胃は容量が小さく(生後数日でサクランボから鶏卵大程度)、食道と胃をつなぐ噴門部の筋肉が緩いため、授乳時に飲み込んだ空気が胃や腸を押し広げ、大人でいう激しい腹部膨満感や差し込み痛(コリック)を引き起こします。抱っこしてゆすっても泣きやまないのは、親への甘えではなく、身体の内側から生じる不快感に赤ちゃんなりに対処しようと奮闘しているサインなのです。