1970年代から1980年代のバブル期にかけて黄金期を迎えたエアシューターですが、1990年代以降、全国のホテルから驚くべきスピードで撤去・休止されていきました。調査取材によって浮かび上がった、衰退を決定づけた4つの構造的要因を紐解きます。
第1の要因は、客室用「マイコン式自動精算機」の爆発的普及です。1980年代後半、通信技術とマイコン制御を組み合わせた客室自動精算機(液晶画面や音声ガイダンス付きの精算端末)が開発されました。エアシューターは「非対面」を実現したものの、フロント側には常に人間が待機し、飛んできたカプセルを開けて金額を数え、釣り銭を詰めて打ち返すという「完全な人手作業」を必要としていました。自動精算機が導入されたことで、フロントの人件費を劇的に削減できるようになり、経営効率の面でエアシューターは一気に時代遅れとなったのです。
第2の要因は、1984年(昭和59年)の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)大幅改正と1985年の施行です。この改正により、いわゆる「ラブホテル」が風俗第四号営業(現・店舗型性風俗特殊営業等)として厳密に定義され、設備構造に厳しい基準が課されました。特に「従業員と客が面接しない構造」や「外部から見通せない構造」に対する監視が強まり、帳場(フロント)の設置基準が見直されたことで、改装や建て替えを行うホテルが相次ぎました。このリニューアルのタイミングで、多くの施設が旧態依然とした配管システムを撤去しました。
第3の要因は、配管の老朽化とメンテナンス業者の撤退です。エアシューターは建物内部に張り巡らされた長大なパイプライン、気密性を保つゴムパッキン、専用ブロワーモーターで構成される機械仕掛けのシステムです。築年数の経過とともに、管内の結露によるサビ、パッキンの劣化による気密漏れ(エア圧不足)、さらには利用者が規定外の異物や濡れた紙幣を入れたことによる「カプセルの管内スタック(詰まり)」が頻発しました。壁や天井を破壊しなければ修理できないケースも多く、専用パーツを製造するメーカーの相次ぐ撤退も重なり、修理不能となって放置・塞ぎ込みに至る例が激増しました。
第4の要因は、決済手段の多様化とキャッシュレス化です。2000年代以降、クレジットカード決済やデビットカード、さらには交通系ICカードやQRコード決済が急速に浸透しました。エアシューターは構造上「物理的な現金」しか運ぶことができず、通信回線と暗号化端末を必要とするデジタル決済に全く対応できませんでした。