物語が迎えるフィナーレにおいて、ファンが最も固唾を呑んで見守ったのが「神官長フェルディナンドとの関係性の決着」です。保護者であり、厳格な教育係であり、時に冷酷な政治的指示を下す師弟のような間柄であった二人の関係は、第5部「女神の化身」において劇的な変容を遂げます。
王族の権力闘争の犠牲となり、衰退する大領地アーレンスバッハへと婿入りさせられ、暗殺の危機に晒されていたフェルディナンド。彼を救い出すため、ローゼマインはエーレンフェストの騎士団や神殿関係者を率い、前代未聞の敵地強襲(アーレンスバッハ奪還戦)を敢行します。「自分の家族であり、本を読ませてくれる居場所を守る」という純粋な行動理念が、結果として国家の中枢を揺るがす軍事行動へと直結した瞬間でした。
動乱の終息後、王権の象徴である「グルトリスハイト(真の王の書)」を継承した彼女は、自らが最高権力者(ツェント)の座に就くことを辞退。その代わりに、自らの手で平定したアーレンスバッハを新たな領地「アレキサンドリア」と命名し、自らが領主(アウブ)に君臨する道を選びました。この領地名は、古代エジプトの「アレクサンドリア図書館」に由来しており、国中のあらゆる書物を集積する「本の都」を築くという彼女の終生変わらぬ野望の結実です。
そして、彼女の隣に立つ唯一無二の伴侶として選ばれたのがフェルディナンドでした。膨大すぎる魔力の釣り合い、政治的手腕の補完、そして何より「互いのためなら世界を敵に回すことも厭わない」という深層心理の共鳴を経て、二人は正式に婚約を締結。恋愛感情という言葉だけでは括り切れない、魂のバウンダリーが完全に一体化したパートナーシップとして結末を迎えます。