トガちゃんがヴィランへの道を歩むことになった背景を理解するには、彼女の特異な生い立ちと精神構造に目を向ける必要があります。公式ファンブック等に記された彼女の基本情報は以下の通りです。
本名は渡我被身子。8月7日生まれ、身長157cm。何よりも特徴的なのは、トガちゃんの個性「変身」です。他者の血液を摂取することで、その人物の姿形を完全にコピーできる能力を持ちます。さらに物語後半の覚醒を経て、「心から好意を抱き、深く理解している相手」であれば、変身先が持つ固有の能力(個性)までも行使可能になるという恐るべき進化を遂げました。
彼女にとって「血を吸うこと」は、常人が抱く「キスをしたい」「触れ合いたい」という感情と全く同義の愛情表現でした。しかし、この本能的な衝動は、平穏と秩序を最優先とする家庭環境において完全にタブー視されます。両親は彼女の特異性を「異常な歪み」と断じ、矯正施設へ通わせ、「普通の子どもの仮面」を被ることを強要し続けました。
精神を縛り付けられた少女の抑圧は、中学の卒業式当日に限界を迎えます。好意を寄せていた同級生・斎藤くんをカッターナイフで切りつけ、ストローでその血を啜るという凄惨な事件を起こして逃亡。以後、彼女は戸籍を捨て、社会から姿を消した連続失血殺人犯として指名手配される身となりました。彼女が求めた吸血の衝動は、破壊衝動などではなく、「好きな人そのものになりたい」という極めて純粋で歪んだ愛情欲求の裏返しだったのです。