国内外の動物保護団体や臨床獣医師たちは、SNS上で流行するこの手の悪ふざけに対し、明確に「虐待に等しい危険行為」として強い警告を発信しています。画面上ではコミカルに見えるリアクションの裏側には、生命に関わる多大な身体的・精神的リスクが潜んでいます。
猫が予期せぬパニックによって限界を超えた跳躍を見せた際、着地点のフローリングで足を滑らせて前十字靭帯断裂や関節脱臼、骨折を負う事故が臨床現場で多数報告されています。さらに、驚愕のあまり壁や給餌台の角、ガラス戸に頭部や腰を激しく強打し、内臓破裂や外傷性ショックを起こすケースも少なくありません。パニック時の猫は周囲の状況を認知する余裕を完全に失っているため、人間が予期しない致命的な自損事故へと直結します。
さらに深刻なのが、目に見えない猫のストレスとトラウマの形成です。猫は環境の変化や恐怖体験に極めて敏感な動物であり、一度でも恐怖を感じた場所や状況を強く記憶します。安全であるはずの食事場所で生命の危機を感じた猫は、その後以下のような重篤な猫の体調不良リスクに直面します。
- 摂食拒絶(拒食症):餌皿の周囲を危険地帯と認識し、食事を受け付けなくなる。猫は数日間の絶食で致死性の高い肝リピドーシス(脂肪肝)を発症するリスクがある。
- 猫の特発性膀胱炎(FIC):極度の恐怖と慢性的ストレスにより、膀胱粘膜のバリア機能が低下。血尿や排尿困難を引き起こし、尿道閉塞に陥れば数日で命を落とす。
- 過剰グルーミングと自傷性脱毛:パニック体験による不安を紛らわせるため、腹部や四肢の毛を皮膚が擦り切れるまで舐めむしり、広範囲の脱毛や皮膚炎を併発する。
- 飼い主への愛着崩壊:背後から恐怖を仕掛けられたことで飼い主を「危険をもたらす存在」と認識し、威嚇、攻撃、あるいは家具の隙間に引きこもって出てこなくなる。
一度崩壊してしまった信頼関係や発症したストレス性疾患を治療するには、数か月から数年にわたる投薬治療や行動療法が必要となり、最悪の場合は生涯にわたってトラウマが消えないことも珍しくありません。数秒の動画で「いいね」を獲得するために愛猫に負わせる代償としては、あまりにも重すぎると言わざるを得ません。