SNSやレシピ投稿サイトで頻繁に見かける誤った情報として、「激辛ラー油をたっぷりかければ本格的になる」という思い込みがあります。しかし、本場・成都の四川料理店を取材・研究すると、激辛至上主義とは全く異なる事実が見えてきます。
四川料理の真髄は「七味(甜、酸、麻、辣、苦、香、鹹)」の調和です。辣(辛味)だけが突出すると、鶏肉の淡白な甘味やピーナッツの香ばしさを覆い隠してしまいます。名店のタレが真っ赤に見えるのは、激辛唐辛子を煮出した油ではなく、パプリカ色素や香辛料の風味を低温でじっくり抽出した「紅油(香辛料ラー油)」を多量に使用しているためです。見た目ほど辛くなく、むしろ豊かな香りと甘味を感じさせるのが本来の姿です。
また、「タレを作ってすぐに肉にかける」というのも家庭でやりがちなミスです。調合したタレは、香味野菜の香味成分が油と醤油に馴染むまで、常温で最低15分〜30分寝かせる必要があります。このわずかな待機時間によって、ネギやニンニクの角が取れ、調味料全体がひとつのソースとして劇的にまとまります。