情報が一人歩きしやすいネット社会において、ニュウドウカジカにはいくつかの根強い「デマ」や「誤認」がつきまとっています。報道関係者としてその真偽を検証します。
誤解1:ニュウドウカジカは絶滅寸前の危険水域にある?
SNS上では定期的に「ニュウドウカジカ 絶滅危惧種の噂」が拡散されます。しかし、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト最新データにおいて、狭義のニュウドウカジカ(Psychrolutes marcidus)は即座に絶滅危惧種(CR/EN)に直面していると断定されているわけではありません。一部では生息データの不足(Data Deficient)や低懸念(LC)として分類されることもあります。
ただし、彼らが暮らすオーストラリア周辺の深海域は、カラスエイやロブスターを狙う大型底引き網(トロール漁)の主要ルートと重なっています。動きが極めて鈍く、繁殖サイクルが遅い長寿生物であるため、混獲によって局所的な個体群が深刻なダメージを受けていることは事実であり、国際的な海洋保護団体が保護の象徴として注視を続けています。
誤解2:日本の水族館に行けば生きた姿が見られる?
「本物の泳ぐ姿を一目見たい」と考える方は多いですが、ニュウドウカジカ水族館展示のハードルは極めて過酷です。水深1,000mクラスの超高圧と低水温(約2〜4℃)を同時に再現・維持できる特殊加圧水槽は、世界中の研究施設を見渡しても数台しか存在せず、巨額の運用コストがかかります。
日本国内の施設(アクアマリンふくしま、サンシャイン水族館、沼津港深海水族館など)で展示されているのは、日本近海の深海に生息する同属近縁種の「ボウズカジカ(Psychrolutes phrictus)」や、液浸標本であることがほとんどです。もし生きた生体が展示されたとすれば、それ自体が国際的なニュースになるほどの偉業と言えます。