新海作品において「水」や「湖」は単なる背景美術にとどまらず、物語の根幹を象徴する重要なモチーフとして機能しています。『君の名は。』における糸守湖は、過去の天体衝突という破壊の歴史を抱えながらも、静寂と生命を育む器として描かれています。
日本列島の山間部に佇むカルデラ湖や断層湖は、古来より神道的な信仰の対象であり、神話や民話の舞台となってきました。諏訪湖に伝わる御神渡り(おみわたり)神事や、諏訪大社を中心とする龍神信仰の気配が、三葉の実家である宮水神社の儀礼や伝承のリアリティを底上げしています。緻密なロケーション選定と神話的世界観の融合こそが、鑑賞者の琴線に触れる圧倒的な没入感を生み出している理由です。