高齢運転者標識をめぐる歴史の中で、もう一つの大きな転換点となったのがデザインの刷新です。元々は1997(平成9)年に制定された、橙色と黄色で構成された水滴型(しずく型)のシンボルマークが長らく親しまれていました。これが一般に「もみじマーク」や「シルバーマーク」と呼ばれるものです。
しかし、この旧マークに対して当事者であるシニアドライバーから「秋の枯れ葉を連想させて縁起が悪い」「人生の黄昏を突きつけられているようで恥ずかしい」という精神的抵抗感が根強く表明されていました。当時の警察庁のモニター調査でも、マークを付けたくない理由の筆頭に「デザインへの不満」が挙げられる事態となったのです。
事態を重く見た警察庁はデザインの公募を実施し、2011(平成23)年2月1日に新たな標識を導入しました。これが現在主流となっている四つ葉マーク(シードマーク)です。クローバーを模した四つ葉の中に「シニア」の頭文字である「S」が浮かび上がる明るいグラフィックへと刷新されました。
ここで重要なのは、旧もみじマークが法律上「廃止・無効化」されたわけではないという事実です。道路交通法施行規則の経過措置により、現在も旧来のもみじマークを車に掲示して公道を走行することは合法であり、新マークと全く同一の法的保護を受けることができます。