真野あずさのメディア露出激減を語る上で欠かせないのが、日本のテレビドラマ界における「2時間サスペンス枠の絶滅」という地殻変動です。大学在学中に雑誌の表紙を飾ったことで注目を集め、1982年のドラマ『風の鳴る国境』(TBS系)で本格デビューを飾った真野あずさは、その知性と気品あふれる美しさから、瞬く間に「お茶の間が最も信頼する知性派女優」としての地位を確立しました。
その真骨頂となったのが、1986年から2005年まで日本テレビ系『火曜サスペンス劇場』で足かけ20年にわたり放送された『弁護士・高林鮎子』シリーズ(全34作)です。橋爪功演じる調査員・竹森慎平との小気味よい掛け合い、日本全国の鉄道網を駆使した緻密な時刻表トリックの解明、そして被疑者の心情に寄り添う温かくも毅然とした法廷劇は、最高視聴率20%超を連発する国民的人気作となりました。さらにテレビ朝日系『土曜ワイド劇場』の『はみだし弁護士・巽志郎』やテレビ東京系『検事・近松茂道』など、各局の看板枠で圧倒的な存在感を示し続けました。
2005年の『火曜サスペンス劇場』終了に続き、2017年にはテレビ朝日の『土曜ワイド劇場』もレギュラー枠としての幕を閉じました。テレビ局各社が制作費の削減と若年層コア視聴率の獲得へと舵を切る中で、真野あずさが主戦場としていた「大人の鑑賞に耐えうる本格旅情ミステリー」の受け皿自体が激減したのです。自らの代表作と誇れるジャンルが衰退する中で、無理に深夜ドラマの端役やバラエティ番組のパネラーへ転身することなく、潔く第一線から身を引く道を選んだことこそが、メディアから姿を消した真因と言えます。