「薄いから危険」という主観的な印象論を排し、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)や警察庁の公式統計から軽自動車死亡事故率データを精緻に読み解くと、意外な実態が浮かび上がります。乗車中死傷者数に対する「死亡・重傷率」において、軽自動車は普通乗用車に対して約1.3倍から1.4倍前後の水準で推移しており、巷で囁かれる「事故に遭えば即死する」といった極端なリスク差は確認できません。
独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が実施するJNCAP新車アセスメント衝突テストにおいて、最新の軽自動車は軒並み高得点をマークし、最高ランクである「ファイブスター賞」を獲得する車種が相次いでいます。フルラップ前面衝突(時速55km)やオフセット前面衝突(時速64km)において、ダミー人形の頭部・胸部傷害値は普通乗用車と同等クラスの安全域に収まっています。
ただし、ここには見落としてはならない構造力学の原則が存在します。JNCAPの試験は「同等の重量を持つ固定壁や台車」に対する衝突実験です。現実の路上で発生する軽自動車と普通車の安全性比較では、車両重量の差(質量比)が決定的な影響を及ぼします。2トンの大型SUVと1トンの軽自動車が正面衝突した場合、物理法則(運動量保存則)に従って軽自動車側が受ける減速G(衝撃力)は普通車の約2倍に達します。この「重量格差による物理的受傷リスク」こそが、統計上の致死率差を生み出している本質的な原因です。