被害者の多くが「結婚前は優しかった」「たまに見せる優しさが本物だと思いたい」と願います。しかし、心理臨床の現場において、モラハラ夫が治らない理由は明確な構造的要因に基づいていると指摘されています。
根本にあるのは、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の傾向や、極度に歪んだ特権意識です。彼らは一見すると自信満々に見えますが、内面には「他者からの評価に過敏で脆弱な自己」を抱えています。自分の脆いプライドを守るために、身近な妻を標的にして見下し、支配することで心理的な安定を保とうとするのです。
さらに事態を複雑にしているのが、加害者の「無自覚性」です。彼らの認知構造では、「自分は家庭のために正当な教育・指導をしている」「妻に至らない点があるから教えてやっている」と本気で信じ込んでいます。罪悪感を持たないため、一般的な夫婦喧嘩のように「反省して行動を改める」というプロセスが機能しません。
無自覚な加害者に対し、「あなたの言っていることはモラハラだ」と直接指摘すると、激しい逆上(自己愛憤怒)を引き起こす危険性が極めて高いため、慎重な対応が求められます。