ネット上の数理コミュニティや専門書で「4次方程式の解の公式」を検索したことがある人は、画面を埋め尽くす異様な数式の長さに息を呑んだ経験があるはずです。2次方程式の解の公式がわずか1行、文字数にして20文字程度で記述できるのに対し、一般的な4次方程式 $ax^4 + bx^3 + cx^2 + dx + e = 0$ の根を係数 $a, b, c, d, e$ だけで直接書き下した公式は、標準的なA4用紙に印刷した場合、数ページから十数ページにおよぶ数万文字の数式群へと膨れ上がります。
数式処理システム「Mathematica」などで一般解を愚直に全展開させると、数式エディタの描画処理が一時フリーズするほどのデータ量を出力します。平方根の中に立方根が入り、その立方根の中にさらに別の平方根が重層的に入り組む「多重根号」の怪物です。実務や学術研究において、この巨大な数式に数値を手計算で代入する人間は誰一人として存在しません。仮に代入計算を試みても、途中の符号ミスや桁落ちによる計算破綻が不可避だからです。
つまり、4次方程式の解の公式が高校や大学初年度のシラバスから除外されているのは、「存在しないから」ではなく、「人間の手計算の認知限界を完全に超えており、教育的・実用的な価値が著しく低いから」という極めて実利的な理由によります。