自働債権とは?受働債権との違いや覚え方・相殺の要件を徹底解説!

自働債権とは?受働債権との違いや覚え方・相殺の要件を徹底解説!

自働債権とは?受働債権との違いや覚え方・相殺の要件を徹底解説!の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点でまとめました。

ネット上の掲示板やSNSでは、「相殺」に関して断片的な情報が独り歩きし、致命的な誤解を生んでいるケースが散見されます。実務担当者が特に注意すべき3つの盲点を検証します。

第1の盲点は、「自働債権に相手の抗弁権が付着している場合」の相殺制限です。例えば、売買契約において「商品を引き渡すまでは代金を支払わなくてよい」という同時履行の抗弁権を相手が持っている場合、その代金債権を自働債権として相殺を仕掛けることは判例上許されません。これを認めると、相手方が正当に持っている「商品を受け取る権利」を一方的に奪うことになるためです。ただし、相手が抗弁権を持っている債権を「受働債権」として、こちらから自分の持っている無傷の債権で相殺することは可能です。抗弁権を放棄して支払うのと同義だからです。

第2の盲点は、相殺の効力発生時期に関する「遡及効(そきゅうこう)」の誤解です。相殺通知を出した日に初めて債権が消滅するのではなく、民法506条2項により「相殺適状に達した時点にさかのぼって効力が生じる」と定められています。これにより、相殺適状になった日以降に発生していた遅延損害金や利息は、最初から発生していなかったものとして扱われます。通知日時点の元利金計算ではなく、対状時点の残高に遡って清算計算を行う必要がある点は、経理・財務の実務で極めて頻繁に見落とされるトラップです。

第3の盲点は、「契約書の相殺禁止特約」の有効性です。改正民法505条2項により、当事者間で「相殺を禁止または制限する特約」を結ぶことが正式に認められています。契約書にこの条項が入っている場合、原則として一方的な相殺の意思表示は無効となります。ただし、善意無重過失の第三者には対抗できないなどの例外要件も付加されたため、契約締結時のリーガルチェックが一段と重要度を増しています。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。