同じ発達障害に分類されながらも、ADHDとASDでは脳内で主たる影響を受けている神経伝達物質やネットワーク回路に明確な差異が存在します。この違いを理解することが、特性に応じた適切な対処法を見出すための基礎となります。
ADHDの病態生理の中心に位置するのが、意欲や報酬予測、集中力の維持に関与する発達障害 ドーパミン 神経伝達物質およびノルアドレナリンの機能異常です。神経細胞の隙間(シナプス間隙)に放出されたドーパミンが受容体に結合する前に、ドーパミントランスポーター(DAT)によって過剰に回収されてしまうことによって、脳の報酬系回路へのシグナル伝達が滞ります。ADHD 脳の機能低下 理由とされる集中力の散漫や先延ばし癖は、本人の意志が弱いからではなく、脳が「十分な報酬(快感や達成感)が得られる」と認識する閾値が極めて高く設定されているために、強烈な刺激や興味の対象以外に対して前頭葉がアイドリング状態に陥ってしまう生化学的現象です。
対照的にASDにおいては、セロトニン系の代謝異常や、神経伝達の興奮性と抑制性のアンバランス(GABA作動性神経の機能低下)が指摘されています。幼少期の脳発達において不要なシナプス結合を間引く「シナプス剪定(プルーニング)」が過不足なく行われない結果、局所的な神経配線が過密状態となり、光・音・触覚に対する強烈な感覚過敏が生じやすくなります。
そして両者に共通して見られる深刻な問題が、発達障害 脳の過活動 疲労の構造です。人間が安静にしているときに作動する内省的ネットワーク「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と、作業に集中しているときに作動する「タスクポジティブネットワーク(TPN)」は、シーソーのように互いに抑制し合うのが通常です。しかし発達特性を持つ脳では、このスイッチングが円滑に機能せず、作業中であってもDMNが暴走して脳内で複数の思考が高速回転し続けます。「何もしていないのに夕方になると泥のように疲弊する」「常に頭の中が騒がしい」という当事者の訴えは、エネルギー消費効率の破綻による必然的な結果と言えます。