「圓」という漢字がなぜこのような構造を持つに至ったのかを理解するには、古代中国の漢字成立過程に遡る必要があります。白川静氏の漢字学や古代甲骨文・金文の字源研究によると、この字は「囗(くにがまえ)」と「員(いん)」から成る形声文字です。
内側にある「員」という字は、もともと古代の祭祀で用いられた円形の青銅器「鼎(かなえ)」を上から見下ろした丸い口の形と、財貨を表す「貝」を組み合わせた会意文字でした。つまり、「員」自体に「丸い」「欠けた部分のない完全な器」という意味が込められていたのです。
後に、丸い状態や周囲の境界をより明確に強調するため、全体を外側から取り囲む輪郭線として「囗(くにがまえ)」が付加され、「圓」という文字が完成しました。「角が立たず滑らかであること」「欠け目がなく満ち足りていること」を象徴し、そこから「円満」「円滑」「大団円」といった熟語が派生しています。
日本の貨幣単位が「両」から「圓(円)」へと移行したのは、明治4年(1871年)に明治政府が公布した「新貨条例」が起点です。貨幣の形状が従来の角ばった小判型から西洋式の「丸い銀貨・金貨」に統一されたこと、そして誰もが使いやすい調和のとれた通貨を目指したことから、この「圓」の文字が正式に採用されました。