直流回路であれば「電力=電圧×電流」の計算で完結しますが、家庭用コンセントやオフィス、工場などの交流電源を扱う場合、避けて通れないのが「交流の位相のズレ」です。ここで重要になる概念が交流単相三相計算および力率計算方法です。
交流電源では、電圧と電流の波形にズレが生じます。このとき、回路に供給される見かけ上の電力を「皮相電力(単位:VA)」、実際に仕事として消費される有効な電力を「有効電力(単位:W)」と呼びます。皮相電力に対する有効電力の割合を示した係数が「力率(cosθ、通常は0〜1.0)」です。
【単相交流(家庭用100V/200V)の計算式】
有効電力(W)= 電圧(V)× 電流(A)× 力率(cosθ)
白熱電球や電気ストーブのような単純なヒーター機器は力率がほぼ「1.0(100%)」であるため「W=V×A」がそのまま成立します。しかし、モーターを内蔵した扇風機、洗濯機、コンプレッサーを動かすエアコン、PC用電源ユニットなどはコイルやコンデンサを含むため、力率が「0.7〜0.9」程度に低下します。
もし力率0.8の機器に100Vの電圧をかけ、10Aの電流が流れていた場合、皮相電力は「100V × 10A = 1000VA」ですが、実際に仕事をする有効消費電力は「1000VA × 0.8 = 800W」となります。
【三相交流(動力用・業務向け200V)の計算式】
店舗用大型エアコンや業務用冷蔵庫、工場の工作機械などで利用される三相3線式交流では、相間の干渉を数式化した「√3(約1.732)」を掛け合わせる必要があります。
有効電力(W)= √3 × 線間電圧(V)× 線電流(A)× 力率(cosθ)
例えば、三相200Vで線電流が15A、力率が0.85の業務用機器であれば、計算式は「1.732 × 200V × 15A × 0.85 ≒ 4417W(約4.42kW)」となります。オフィスのブレーカー契約や工場の動力盤の負荷容量を試算する際は、この三相計算と力率の補正を怠るとブレーカー遮断事故に直結するため、設計技術者にとって必須の基礎知識です。