耳の違和感を覚えた生活者がどのような経路を辿り、どういった判断ミスを犯しやすいのか。SNSやQ&Aサイトに集まる数百件の相談データ、ならびに耳鼻咽喉科クリニックの初診アンケートを分析すると、共通するリアルな実態が浮かび上がってきます。
「熱がないから風邪ではないと思い、耳垢が詰まっているのかと綿棒で奥をグリグリほじってしまった。翌日には耳介を触るだけで激痛になり、耳鼻科に行ったら外耳道炎と初期の急性中耳炎が合体して悪化していた」(30代男性・会社員の手記より)
「左の耳の奥がつばを飲むたびにピキッと痛むのに、喉の痛みはあまり感じず放置。1週間後に急に口が開かなくなり、救急外来へ駆け込んだところ『扁桃周囲炎』と診断され、即日点滴治療を受ける羽目になった」(20代女性・知恵袋の投稿より)
臨床データによると、耳鼻咽喉科を受診した耳痛患者のうち、耳自体に肉眼的な病変が認められない症例が約35%存在します。その大多数が咽頭炎や扁桃の微細な炎症、あるいは耳管機能不全です。患者本人は「喉は痛くない、痛いのは耳だ」と主張しても、ファイバースコープで喉頭を観察すると下咽頭や喉頭蓋にアフタ(潰瘍)が見つかる事例が後を絶ちません。自覚症状のある部位と、実際の病巣が乖離しやすい点が、この症状の最も厄介なトラップといえます。