童磨戦において最も読者を驚かせたのは、しのぶが童磨に敗れ去った事実そのものよりも、「最初から吸収されること前提で戦場に立っていた」という狂気的なまでの計略の全貌でした。なぜ彼女は、自らの命を投げ打つ作戦を選ばなければならなかったのでしょうか。
その背景には、鬼殺隊の中でも唯一「鬼の頸を斬ることができない」というしのぶ自身の肉体的コンプレックスと、上弦の鬼が持つ規格外の再生力への冷徹な分析がありました。通常の一撃離脱の毒殺では、上弦の弐クラスの強敵を仕留めきれないことを、しのぶは誰よりも痛感していたのです。
公式ファンブックや作中の描写によると、しのぶは「童磨が若い女性に異常な執着を持ち、丸ごと好んで体内に取り込む」という習性を、生前のカナエから聞き出していました。そこで彼女は、鬼でありながら無惨打倒を目指す珠世と手を組み、自らの肉体を実験台にして1年以上にわたり高濃度の藤の花のエキスを摂取し続けたのです。
爪の先から髪の毛、内臓に至るまで全身を毒の塊へと変貌させたしのぶは、童磨に自らを捕食させることで、「外側からの攻撃ではなく、内側から童磨の全細胞をドロドロに溶かす」という完全な罠を仕掛けていました。自らの死を勝利のための確定ピースとして組み込んだこの策こそが、童磨討伐の決定打となったのです。