全国の高等学校における定期テストや模擬試験の答案分析、教育現場のヒアリングから浮かび上がるのは、高校生が「平安貴族の生活空間と心理描写のズレ」でつまずくケースが非常に多いという現実です。特に以下の2点において誤読が多発しています。
・誤読ポイント1:「なぜ暗い部屋で隠れるように話しているのか?」
現代の感覚では「部屋の電気をつければよい」「なぜ物陰に隠れるのか」と疑問に思われがちです。平安時代の貴族女性は、家族以外の男性はもちろん、親しい女房同士であっても昼間に素顔をあからさまに見せることを恥じる文化(「まばゆし」の感覚)を持っていました。夜間、薄暗い高坏の灯火の元でのみ、御簾越しに顔を合わせるのが最高の奥ゆかしさとされていた空間認識を補足しなければ、清少納言の羞恥心は理解できません。
・誤読ポイント2:「絵を造らせたまふ」の主語と行為の混同
「絵を造らせたまふ」というフレーズにおいて、生徒の約3割が「定子が自分で絵を描かせた」あるいは「清少納言に描かせた」と誤認します。正しくは「昔の有名な絵巻を(絵師に命じて)模写・復元してお作りになったもの」という意味であり、主語は中宮定子(あるいは定子の父・道隆の指示)です。絵の話題を振ることで、緊張する清少納言に話のきっかけを与えようとする定子の「心理的配慮」を読み解くことが正解への鍵となります。
定期テスト対策の実戦問題にチャレンジ
【問題】下線部「おぼつかなしと思しめすらんかし」について、 ①「おぼつかなし」のここでの意味を答えよ。 ②中宮定子は清少納言のどのような様子を見て、そのように思うと清少納言は懸念しているか。簡潔に説明せよ。
【模範解答】
①「頼りない」「心もとない」「気が利かない」などのニュアンス。
②定子から昔の絵について質問されたにもかかわらず、緊張と恥ずかしさのあまり満足な返答(挨拶)も申し上げることができない様子。