ネット上の簡易な人間関係アドバイスでは、「自己肯定感を高めてあげれば落ち着く」「優しく褒めて認めてあげることが大切」といった記述が散見されます。しかし、臨床心理の現場において、これは最も危険な誤解と断言されています。病理的な自己愛を持つ人物に中途半端な共感や賞賛を与えれば、「この人間は自分の支配下にある」と見なされ、要求のインフレと攻撃のエスカレーションを招くだけです。
ここで理解しておくべきが、相手が繰り出す2つの危険な防衛規制です。1つ目は、自尊心が少しでも傷つけられたと感じた瞬間に爆発する「自己愛憤怒(ナルシシスティック・レイジ)」。正論でミスを指摘されたり、軽視されたと被害妄想を抱いたりした際、烈火のごとく激昂し、相手が屈服するまで徹底的に罵倒を浴びせます。この怒りは理性的な対話で鎮火することはなく、火に油を注ぐ結果にしかなりません。
2つ目は、巧みなガスライティングの手口です。「そんな発言はしていない」「君の勘違いだ」「最近疲れていて記憶が曖昧なのではないか」といった嘘を平然と繰り返し、被害者側の現実認識や記憶を歪めさせます。被害者は徐々に「自分の精神がおかしくなったのではないか」と自己疑念に追い込まれ、加害者への依存を深めていきます。これらは無意識のうちに極めて洗練された形で行われるため、第三者からは「熱心な指導」や「痴話喧嘩」に見えてしまい、孤立無援の状況に追い込まれる点が極めて厄介です。